ハロウエルアマガエル

Hyla hallowellii Thompson,1912

両生綱 > 無尾目 > アマガエル科 > ヨーロッパアマガエル属

  • 鳴くオス成体(沖縄島)
概要分布分類体の特徴生態その他
大きさ
    全長 3~4cm
説明
     
  • 樹上棲の小柄なカエル
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  • ニホンアマガエルに比べてスリムな体型をしている
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  • 奄美群島から沖縄島の一部にのみ分布
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  • 繁殖期には人里近くでも盛んに鳴く
保全状況
    環境省レッドリスト2017未掲載
分布 奄美群島(喜界島、奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、徳之島、与論島)、伊平屋島と沖縄島北部
西表島から本種と思しき2個体が1969年に採集されているが[3]、その後は全く見つかっていない[2]
生息環境 産卵池となる水辺環境を含む森林内で生活する。樹上性。繁殖期には低地の水田や市街地などでも姿を見やすい。[1]
タイプ産地
    喜界島
説明
  • 学名は「ハロウェル氏のアマガエル」の意味で、日本の両生類爬虫類を研究したHallowell氏に献名したもの。[2]
  • 遺伝的には台湾や中国本土に分布するシナアマガエル(H. chinensis)に近く[3]、同じく日本に分布するニホンアマガエル(Dryophytes japonicus)とは別属となっている[5]。
形態
  • 背面は一様な黄緑色で、腹側は白い。鼻先からわき腹にかけて、しばしば褐色の線や点列が見られる。

  • 鼻先は尖らず、裁断状に角ばる。水かきはやや発達し、指先には吸盤が見られる。

見分け方 本種の分布域内ではアマミアオガエルやオキナワアオガエルに似ているが、次のような識別点がある。
  • 成体であればハロウェルアマガエルは3~4cmと小さく、アオガエル類は4~8cmと大きい。
  • 鼻先を横から見ると、ハロウェルアマガエルは裁断状に角ばる(2)がアオガエル類では尖る。
  • ハロウェルアマガエルではしばしば見られる鼻先からわき腹を通る線状の模様(3)が、アオガエル類では見られない。

分布域は重複しないが、形態的にはニホンアマガエルとも似る。ハロウェルアマガエルでは前肢の水かきの発達がよく、鼻先からわき腹にかけての線は普通ニホンアマガエルより細く、また背面に黒斑が現れない。全体に細く華奢な体つきでもある。
食性 不明
繁殖 繁殖期は3~5月で、水田や池などの止水域に産卵する。[1]
直径1.2mmほどの小さな卵を水中に産む。[1,2]
幼生 全長40mmに達する。目の間隔が広く、上から見ると体側面に突き出して見える。また尾びれは胴体の前半部分から始まる。
鳴き声 ギーッギーッギーッギーッ……
繁殖期に最も盛んだが、非繁殖期でもしばしば鳴く。
コメント 生態については定性的な情報が少しあるばかりで、調べられていないことは多いようです。
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執筆 木村楓
2023年6月14日 野田叡寛が一部改訂
引用・参考文献
  1. 沖縄県環境部自然保護課. 2017. 改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物第三版(動物編). pp712.
  2. 前田憲男・松井正文. 1999. 改訂版 日本カエル図鑑. 文一総合出版, 東京. 223pp.
  3. Kuraishi, N., Matsui, M., Ota, H., & Eto, K. 2020. Unique evolution of Hyla hallowellii among amphibians of the Central Ryukyus, Japan (Anura: Hylidae). Zoological science, 38(2): 112-121.
  4. Nishioka, M., Sumida, M., and Borkin, L.J. 1990. Biochemical Differentiation of the Genus Hyla Distributed in the Far East. Scientific report of the Laboratory for Amphibian Biology 10: 93-124.
  5. Duellman, W. E., Marion, A. B., & Hedges, S. B. 2016. Phylogenetics, classification, and biogeography of the treefrogs (Amphibia: Anura: Arboranae). Zootaxa, 4104(1): 1-109.

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