Nidirana okinavana (Boettger, 1895)
両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ハラブチガエル属 > ヤエヤマハラブチガエル
概要
[大きさ]
[説明]
八重山諸島と台湾に分布する小型のカエル。 繁殖のために巣穴を掘る。 ハナサキガエル類に似るが、体型はより寸胴で丸っこい。
[保全状況]
環境省レッドリスト2017-絶滅危惧Ⅱ類 石垣市自然環境保全条例-保全種 竹富町自然環境保護条例-希少野生動植物種
分布
[分布]
[生息環境]
平地から山地にかけて生息する[2, 6]。 小河川、池沼、湿地など湿潤な環境で見られることが多い[2]。
分類
[分類]
両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > ハラブチガエル属 > ヤエヤマハラブチガエル
[タイプ産地]
沖縄島か奄美大島とされるが、間違っている可能性が高い[6]。
[説明]
リュウキュウアカガエルと混同されていたため、記載後80年ほど記録がなく、再発見時には台湾に分布するハラブチガエルN. adenopleura に含まれた。鳴き声と形態に差が見られることから、1985年に独立種Rana psaltes として記載された。本種の学名R. okinavana はリュウキュウアカガエルの学名として使われていたが、近年、見直しが行われ、R. psaltes はシノニムに、R. okinavana がヤエヤマハラブチガエルの学名となった。また、リュウキュウアカガエルには新しい学名が与えられた[3, 5, 6]。 アカガエル属Rana に含まれていたが、属の見直しによりハラブチガエル属Nidirana に移された[1]。 属名Nidirana は”繁殖巣のカエル”を意味し、これは本種を含むこの属の数種が繁殖巣穴を形成することに由来する。種小名okinavana は”沖縄の”を意味する[6]。
体の特徴
[形態]
胴に対して四肢が短く、寸胴な体型をしている。 背面は茶褐色~灰褐色で、体側は褐色。背中線が見られることもある。 腹面は白~黄白色で斑紋が入ることがある。 後肢の指間には水搔きが見られる。
[似た種との違い]
八重山諸島において同所的に見られるオオハナサキガエルに似るが、ヤエヤマハラブチガエルのほうが寸胴で後肢が短く、体サイズがかなり小さい。またサキシマヌマガエルと体形は似るが、体色が大きく異なる。
オオハナサキガエル サキシマヌマガエル
生態
[食性]
地上性の節足動物や土壌動物を主に捕食する。特に小型のアリ類を高い頻度で捕食している[7, 8]。
[繁殖]
繁殖期は2月~11月だが、主に夏場である[6]。 水際の砂泥質の岸に巣穴を掘り、そこに産卵する[2, 6]。 巣穴は4~5cm程度の球形で、巣穴内は湿っている。水が全くないこともある[2]。
[卵]
1回の産卵数は18~80個で、球形の卵塊として産み出される[2, 6]。 巣穴内で孵化し、幼生は雨とともに近くの水場へ流れる[2]。
[幼生]
体は金色の色素に覆われている[5]。 全長は70mmに達することもある[5]。
その他
[その他]
ハラブチガエル属Nidirana は歌うように美しく鳴くことから、英名でMusic Frogと呼ばれる[4]。
執筆者:高田賢人
引用・参考文献
Dubois, A. 1992. Notes sur la classification des Ranidae (Amphibiens anoures). Bulletin Mensuel de la Société Linnéenne de Lyon 61: 305–352. 福山欣司. 2014. ヤエヤマハラブチガエル.”レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物- 3 爬虫類・両生類”, 環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室(編), 環境省自然環境保護課, 東京都, 134-135. Kuramoto, M. 1985, A new frog (genus Rana ) from the Yaeyama Group of the Ryukyu Islands. Herpetologica 41: 150-158. Lyu, Z.-T., Z.-C. Zeng, J. Wang, C.-y. Lin, Z.-y. Liu, and Y. Wang. 2017. Resurrection of genus Nidirana (Anura: Ranidae) and synonymizing N. caldwelli with N. adenopleura, with description of a new species from China. Amphibia-Reptilia 38: 483–502. Matsui, M. 2011. On the brown frogs from the Ryukyu Archipelago, Japan, with descriptions of two new species (Amphibia, Anura). Current Herpetology 30(2): 111-128. 松井正文・前田憲男. 2018. 日本産カエル大鑑. 株式会社文一総合出版, 東京. 272pp. 戸金大・秋田耕佑・山崎一夫・阿南一穂・福山欣司. 2018. 八重山諸島西表島におけるヤエヤマハラブチガエルの胃内容. AKAMATA 28: 10–14. 戸金大・秋田耕佑・阿南一穂・福山欣司. 2019. 西表島におけるヤエヤマハラブチガエルの成長段階による食性の比較. 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨. https://www.esj.ne.jp/meeting/abst/66/C01-04.html