チョウセンヤマアカガエル

Rana uenoi Matsui, 2014

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > アカガエル属

概要

[別名]

  • ツシマヤマアカガエル

[大きさ] 

  • 体長 オス 5–6 cm メス 6–8 cm

[説明]

  • 対馬と朝鮮半島に分布する。背面は褐色で、斑紋はあまりない。鼓膜付近は焦げ茶色。春になると、止水に球状にちかい形の卵塊を産む。同所的に分布するツシマアカガエルよりも大きい。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020 準絶滅危惧種(NT)
分布

[分布]

  • 国内では対馬。国外では朝鮮半島や済州島。[1, 2]

[生息環境]

  • 平地から山地の水場周辺に生息する。森林に多いとされる。[3, 4]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > アカガエル属 > チョウセンヤマアカガエル

[タイプ産地] 

  • 長崎県対馬 [1]

[説明]

  • 近年まで沿海州に分布するタイリクヤマアカガエル R. dybowskii と同種とされていたものの、対馬の集団はそれと遺伝的に異なることが90年代にはすでに指摘されていた。その後、形態的な解析が行われ、2014年に独立種として記載された。[1, 5]
  • 種小名の uenoi は、昆虫学者であり、爬虫両生類学者でもある上野俊一博士への献名。
  • 系統的にはエゾアカガエルやタイリクヤマアカガエルと近縁である。[2, 6]
体の特徴

[形態][1,4]

  • 背面は褐色で、斑紋はあまりもたない。鼓膜付近が焦げ茶色。腹面は乳白色または赤橙色。とくに雌で赤みが強い。
  • 背側線は鼓膜のうしろで曲がる。水かきはよく発達し、指端は広がらない。雄は鳴嚢をもつ。

[似た種との違い]

  • 対馬では同属のツシマアカガエルと同所的に分布する。両種は成体であれば体の大きさがかなり異なるが、外見は似ている。以下の点が識別に役立つ。なお、ツシマアカガエルのほうが普通種。[7]
チョウセンヤマアカガエルツシマアカガエル
成体の体長大きい(5–7.5 cm)小さい(3–4.5 cm)
上唇地色と同じ褐色白っぽい
鼓膜大きい(眼径の2/3以上)小さい(眼径の1/2ほど)
指先広がらないわずかに広がる
チョウセンヤマアカガエルツシマアカガエル
生態

日本国内では離島にのみ分布するためか、生態的知見は少ない。そのため以下では韓国での報告に基づく内容を含む。

[繁殖]

  • 繁殖は2月から4月に、水田や湿地、水たまりなどの止水で行われる。とくに気温の高い雨後に活発になるようだ。[4, 8]

[冬眠]

  • 成体は池や渓流などの水底で越冬する。[1, 9]

[卵]

  • 卵塊は球状に近い。蔵卵数は1700ほど。[4]

[幼生]

  • 幼生は黄褐色で、体側は金色の斑点が目立つ。全長は45mmほどになる。[1]
その他

執筆者:木村楓

2021年7月公開


引用・参考文献

  1. Matsui M (2014) Description of a New Brown Frog from Tsushima Island, Japan (Anura: Ranidae: Rana ). Zoolog Sci 31:613–620
  2. Yang B-T, Zhou Y, Min M-S, et al (2017) Diversity and phylogeography of Northeast Asian brown frogs allied to Rana dybowskii (Anura, Ranidae). Mol Phylogenet Evol 112:148–157
  3. 竹中践. (2014) チョウセンヤマアカガエル. 環境省(編) レッドデータブック2014 – 日本の絶滅のおそれのある野生生物 -, 3 爬虫類・両生類. ぎょうせい, 東京, p 147
  4. 松井正文 (2018) 日本産カエル大鑑. 文一総合出版
  5. 上野俊一, 柴田保彦 (1970) 対馬の爬虫両生類相小記. 国立科学博物館専報 193–198
  6. Suk HY, Jeon JY, Kim D-Y, et al (2021) The complete mitochondrial genome information of Rana uenoi (Amphibia, Anura, Ranidae) and the phylogenetic implication. Mitochondrial DNA B Resour 6:689–690
  7. カエル探偵団(編). (2020) 見つけて検索! 日本のカエルフィールドガイド. 文一総合出版, 東京
  8. Yoo E, Jang Y (2012) Abiotic effects on calling phenology of three frog species in Korea. Animal Cells Syst 16:260–267
  9. Macias DA, Groffen J, Jang Y, Borzée A (2018) Rana coreana (Korean brown frog) and R. uenoi (Ueno’s brown frog). Hibernaculum. Herpetol Rev 49:121–122

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