シュレーゲルアオガエル

Zhangixalus schlegelii (Günther, 1858)

両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属

概要

[大きさ] 

  • 体長 オス 3–4 cm メス 4–6 cm

[説明]

  • 鮮やかな緑色の体色と、黄色の虹彩が特徴的な、日本固有のカエル。水田のあぜの土中などに泡状の卵塊を産む。昆虫などを食べ、ヘビやタガメ、アライグマに食べられる。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020未選定。ただし地域レベルでは絶滅危惧種に選定されていることも多く、2021年現在20を超える都府県でレッドリストに掲載されている。[1]
分布

[分布] [2]

  • 本州・四国・九州。
  • 北海道でも移入種として捕獲例があるが、定着は確認されていない。

[生息環境]

  • 平地から標高1600mほどまで分布する。水田は本種にとって格好の産卵場所となるが、平野部の水田ではあまり見られず、丘陵地周辺に多い。繁殖期に水場がないこと、生息場所となる樹林がないことなどが、平野部での分布を制限している可能性がある。[3–7]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アオガエル科 > アオガエル属 > シュレーゲルアオガエル

[タイプ産地][7]

  • 日本

[説明]

  • 種小名の schlegelii は、シーボルトの日本での採集品を研究した Hermann Schlegel 氏への献名。[7]
  • 種内でも各地域で遺伝的分化が進んでいる。とくに関東以北と中部以西の二つのグループに大きくわけることができ、それらは200万年以上前に分岐したと推定されている。[8]
体の特徴

[形態][7,9,10]

  • 背面はふつう鮮やかな緑色で、褐色に変化することもある。黄色の斑点をもつこともあるが、モリアオガエルのような暗色斑紋はもたない。虹彩は黄色。腹面はクリーム色で、体側や下顎には暗褐色の小斑が散る。繁殖期の雄は喉元が黒化する。
  • 吻端は雄で尖り、雌ではややにぶいが傾斜する。背面はほぼ平滑。腹面は多角形の顆粒でおおわれる。指先には吸盤をもつ。前後肢ともに水かきをもつが、それほど発達しない。

[似た種との違い]

  • モリアオガエル、ニホンアマガエルは、体色が緑で指に吸盤を持つ点で本種と似ている。また分布域も重複しているため、野外で見間違えやすい。見分け方はモリアオガエルの項を参照。
生態

[食性]

  • 鱗翅目の幼虫などを食べる。繁殖期のオスはほとんど餌を取らない。[9,11]

[被食]

  • タガメ、アライグマ、ヘビ類(シマヘビ・ヒバカリ・ヤマカガシ・ニホンマムシ・アオダイショウ)に捕食される。[12-15]

[繁殖]

  • 繁殖期は平野部で4–6月。高地では遅れ、6–8月になる。産卵は水田の畦や湿地など、水際の土中で行われることが多い(ただし樹上産卵の例も報告されている)。雌雄はペアを形成すると土中にもぐり、そこに泡状の卵塊を産む。このとき、他のオスたちが産卵しようとしている穴に忍び入り(スニーカー戦略)、複数のオスが一匹のメスに抱接した状態で産卵する場合もあるという。[7,9,16–19]

[鳴き声]

シュレーゲルアオガエルの鳴き声(京都5月)

[冬眠]

  • 地表数cmから10cmほどの浅い土中で冬眠する。[9,20]

[卵]

  • 卵塊は泡状で、100–660個のクリーム色の卵を含む。孵化した幼生は、雨とともに水場に流れ出る。[7,18]

[幼生]

  • 背面は褐色。尾には暗色斑紋があり、先端で急にすぼまる形をしている。口器は小さい。歯列は多く、上顎に4–5列の歯列をもつ。モリアオガエル幼生に似るが、本種は尾に暗色斑紋があることが特徴。[21]
  • 変態までにかかる時期は3ヶ月弱。最大全長45mmほど。[9]
その他

[コメント]

  • 水田でコロコロと気持ちのいい鳴き声が聞こえますが、土中で鳴く個体も多いせいか、声を頼りに探してもなかなか姿を見つけられない種です。

執筆者:木村楓

2021年9月 執筆・公開


引用・参考文献

  1. 環境省. いきものログ. [cited 2021 Aug 3]. Available from: https://ikilog.biodic.go.jp/
  2. 更科美帆・上原裕世・上井達矢. 北海道におけるシュレーゲルアオガエル(Rhacophorus schlegelii)の初記録. 爬虫両棲類学会報. 2015;2015(1):29–32.
  3. 大澤啓志・勝野武彦. 多摩丘陵南部におけるシュレーゲルアオガエル生息の環境条件の把握と保全に関する考察. ランドスケープ研究. 1999;63(5):495–500.
  4. 大澤啓志・勝野武彦. 扇状地水田地帯における水田の地形分類とカエル類の分布に関する研究. 農村計画学会誌. 2001;19(4):280–8.
  5. 大澤啓志・勝野武彦. 岩手県胆沢地区の散居水田域におけるカエル類の分布とその規定要因. ランドスケープ研究. 2003;66(5):613–6.
  6. 島田知彦・田上正隆・楠田哲士・藤谷武史・高木雅紀・河合敏雅ほか. 濃尾平野に生息する水田棲カエル類の分布状況. 豊橋市自然史博物館研報. 2015 May;25:1–11.
  7. 松井正文. 日本産カエル大鑑. 文一総合出版; 2018.
  8. Matsui M, Kawahara Y, Nishikawa K, Ikeda S, Eto K, Mizuno Y. Molecular phylogeny and evolution of two Rhacophorus species endemic to mainland Japan. Asian Herpetol Res. 2019;10(2):86–104.
  9. 和田干蔵. 青森市附近に於けるシュレーゲルアヲガヘルに就ての2.3の觀察. 青森博物研究會會報. 1936 Mar 20;(3):1–12.
  10. 中村健児, 上野俊一. 原色日本両生類爬虫類図鑑. 保育社; 1963. 214 p.
  11. 佐野誠., 篠原正典. カエル類 7 種における繁殖生態と食性の関係性について. 帝京科学大学紀要. 2012;8:101–11.
  12. Mori A, Moriguchi. Food habits of the snakes in Japan : A critical review. Snake. 1988;20:98–113.
  13. Hirai T, Hidaka K. Anuran-dependent predation by the giant water bug, Lethocerus deyrollei (Hemiptera: Belostomatidae), in rice fields of Japan. Ecol Res. 2002 Nov 1;17(6):655–61.
  14. Matsuo R, Ochiai K. Dietary overlap among two introduced and one native sympatric carnivore species, the Raccoon, the Masked Palm Civet, and the Raccoon Dog, in Chiba Prefecture, Japan. jmam. 2009;34(4):187–94.
  15. 浜中京介, 森哲., 森口一. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報. 2014(2):167–81.
  16. Fukuyama K. Spawning behaviour and male mating tactics of a foam-nesting treefrog, Rhacophorus schlegelii. Anim Behav. 1991;42(2):193–9.
  17. 大澤啓志, 勝野武彦, 木下勇. シュレーゲルアオガエル雄の繁殖期における水田利用空間の特徴. 農村計画学会誌. 2001;(20):121–6.
  18. 日高敏隆(編). 日本動物大百科 両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社; 1996.
  19. Fukutani K, Onuma H, Nishikawa K. First report on arboreal breeding of Rhacophorus schlegelii (Günther, 1858) (Amphibia, Rhacophoridae). Herpetol Notes. 2020 Apr 23;13(0):341–2.
  20. Ihara S. Site selection for hibernation by the Tree Frog, Rhacophorus schlegelii. Japanese Journal of Herpetology. 1999;18(2):39–44.
  21. 松井正文, 関慎太郎. カエル・サンショウウオ・イモリのオタマジャクシハンドブック. 文一総合出版; 2008.

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