Diploderma polygonatum polygonatum (Hallowell 1861)
爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ亜目 > アガマ科 > キノボリトカゲ属 > キノボリトカゲ > オキナワキノボリトカゲ
概要
[大きさ] [1]
- 頭胴長 オス:53 – 80 mm、メス:51 – 70 mm
[説明]
- 奄美諸島・沖縄諸島に生息する。
- 1990年以降、静岡県、宮崎県日南市、長崎県松浦市、鹿児島県指宿市、屋久島に人為的移入に起源すると思われる集団が発見されている。
- オスとメスの間には性的二型があり、見た目や体サイズが異なる。
- 餌は主に、昆虫やクモなどの小型無脊椎動物。
- メスは4月中旬から8月中旬にかけて林床などの地上にくぼみをつくり、2 – 4個の卵を2 – 3回産む。
[保全状況][2, 15]
- 環境省レッドデータブック指定:絶滅危惧Ⅱ類(VU)[2]
- 鹿児島県指定外来動植物(奄美市および大島郡を除く区域)[15]
分布
[分布][3, 4, 5]
- 奄美群島(奄美大島・喜界島・加計呂麻島・与路島・徳之島)、沖縄諸島(伊平屋島・古宇利島・瀬底島・水納島(本部)・屋我地島・奥武島(名護)・伊計島・宮城島(うるま)・平安座島・浜比嘉島・津堅島・奥武島(南城)・沖縄島・前島・渡嘉敷島・座間味島・阿嘉島・慶留間島・屋嘉比島・久場島・渡名喜島・久米島)[3]
- 宮崎県日南市油津、長崎県松浦市、鹿児島県指宿市、屋久島、静岡県に移入[4, 5]。
[生息環境][1]
- 照葉樹林の林縁部や二次林のほか、民家の庭木や公園の樹木の周辺でも見られる。多少なりとも開けた環境を好み、鬱蒼とした森林内には少ない。
分類
[分類]
- 爬虫綱 > 有隣目 > トカゲ亜目 > アガマ科 > キノボリトカゲ属 > キノボリトカゲ > オキナワキノボリトカゲ
[タイプ産地][6]
- Amakarima Islands(現 慶良間諸島)
[説明][1, 6, 7]
- 以前の分類では、オキナワキノボリトカゲは種Japalura polygonataの基亜種であるJ. p. polygonataとして扱われてきた。
- Japalura属はWangら(2018)による系統解析により、遺伝的に異なる4つのグループを含むことが示され、その結果、4属に分割された。日本に生息する種を含む24種が、キノボリトカゲ(Diploderma polygonatum)をタイプ種として、1861年に立てられたDiploderma属として再定義された[1, 7]。
- 国内には、ヨナグニキノボリトカゲ(D. p. donan)、サキシマキノボリトカゲ(D. p. ishigakiense)の2亜種が生息するほか、 台湾北部にはD. p. xanthostomaが亜種として知られている[6]。
- 分類の変遷については、サキシマキノボリトカゲも参照。
体の特徴
[形態][1, 10]
- 背面の基色は、成体のオスでは鮮明な緑色からややくすんだ緑褐色まで、同一個体内でも環境温度や日照条件などによって変化する。
- 胴部の左右側面には、黄色ないしは象牙色の縦条が走る。
- メスや幼体の背面の基色は、緑褐色、淡褐色、暗褐色ないし赤褐色。オスに比べ同一個体内の体色変化は弱いが、個体間での変異は大きい。
- メスや幼体では、オスの体側に見られる明色の縦条はないか、あっても非常に幅が狭い。
- 3〜5本の暗帯が背面を横切ることが多い。
- 喉にある垂れた皮膚である咽喉垂(デュラップ)の中央から後方にかけての領域が、成体のオスでは朱色ないし橙色、メスや幼体では淡い黄色となる。
- 頭部は大きくて幅が広く、また非常に丈が高いが、この傾向は特にオスで強い。
- 目は大きく、その長径が鼻孔から目の前端までの距離にほぼ等しい。
- 頸部の背中線上には、扁平な三角形ないし五角形の鱗が縦に6〜10枚並んでたてがみ状となており、続く胴部背中線上の鱗も頸部ほどではないもののやや扁平し、鋸歯状の鱗列を形成する。特にオスで強い傾向がある。
- 頭胴長にして、オスはメスよりも20%ほど大きくなる。
- 尾は長く、頭胴長の180~260%に達する。
- 尾が全長に占める割合から、樹木の利用に尾が役立っていると考えられている[10]。
[他種との識別]
生態
[食性][5, 8, 9, 10]
- 小型の無脊椎動物を食べる。特にアリをよく食べるようであるが、大型の昆虫や、地表に這い出てきたミミズを襲うこともある[8]。
- 宮崎県日南市に移入した本亜種の生態調査では、膜翅目(特にアリ)が胃内容物92%を占めていたことが報告されている[9]。
- 鹿児島県宿毛市での本種の生態調査では、ある1個体が数時間の活動中に、アリやその他の昆虫を14匹摂食したほか、胃内容物からアリ、甲虫、ハエ類、バッタ類、サツマゴキブリ、昆虫の幼虫、クモ目およびムカデ類が見つかっている[10]。
- 屋久島における本種の胃内容物調査では、胃内容の70%が膜翅目(アリ)であるほか、甲虫目、チョウ目を含めた3つ分類群で全体の84%を占めていた[5]。
[被食][8, 11, 12]
- 主な天敵はサシバなどの肉食性の鳥類やアカマタ・ハブなどのヘビ類であるが、人為的に持ち込まれたネコやマングース、イタチ、ニワトリなども捕食者として挙げられる[8, 12]。
- 実際に、沖縄県北部のやんばるでは、林道・集落の両方で採集されたノネコの糞から本亜種が発見されている[11]。
[繁殖][1, 9, 13]
- 成体のオスは平均して十数平方メートルほどの縄張りを形成し、他のオスを排除するとともに行動圏の重なるメスと交尾する[1]。
- 行動圏の重なるメスが複数である場合もある[13]。
- メスは4月中旬から8月中旬にかけて林床などの地上にくぼみを作り、その中に普通2〜3個、稀に4個の卵を2~3回産む[1]。
- 孵卵期間は普通50~70日程度[1]。
- 7月下旬から10月下旬にかけて頭胴長22~25 mmほどの孵化幼体が出現する[1]。
- 移入先の宮崎県日南市では、5月下旬から9月初旬が繁殖期とされる[9]。
[行動][8, 13]
- 縄張りオスは、周りから見通しの良い幹にとまり、下向きの探索姿勢でいることが多いが、しばしば喧伝ディスプレイという腕立て伏せ行動により自分の存在を誇示する[13]。
- 縄張り内に他のオスが侵入した場合、互いに逆方向を向きながら相手に体側面を誇示し、腕立て伏せ行動等の定型的な威嚇ディスプレイを行う[13]。
- 腕立て伏せは、興奮状態を示す適用範囲の広いディスプレイと考えられている[8]。
- 求愛時には、首を縦に振る求愛ディスプレイを行う[13]。
- 夜になると、高さ1.5~2.5 mの枝で、しがみつくようにして寝ている[13]。
その他
[移入問題][10, 14]
- 本亜種は鹿児島県や宮崎県では移入種であるため、競合的な干渉の中で在来種の減少が危惧される[10]。
- 鹿児島県では、本亜種と競合しうる在来のトカゲ類に、ニホンカナヘビ、ニホントカゲが挙げられる。本亜種が仮に今後、分布範囲を拡大させ生息密度が上昇した場合、在来生態系に甚大な変質(とりわけ生物多様性の低下)がをもたらすことが考えられる[14]。
[コメント]
- 筆者が人生で最初に採集したアガマ科である。飼ってみたが、代謝がよくてすぐに痩せるし、縄張りをもつため、一匹に一つのケージが必要となり、世話が焼けた。 目が大きく、口の開いた間抜け面であり、表情は非常にかわいい。(日野)
- 本亜種に噛まれると、非常に痛い。特に大型個体に噛まれてしまうと流血する場合もあるので、注意したい(柳原)。
執筆者:柳原諒太朗、日野智之(更新日:2025年1月21日)
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引用・参考文献
- 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.
- 環境省レッドリスト2020. https://www.env.go.jp/content/900515981.pdf
- 菊川章. 2019. 沖縄県立博物館・美術館における両生類および陸生爬虫類の標本資料の収蔵状況. 沖縄県立博物館・美術館, 博物館紀要, 第12号.
- 国立環境研究所 侵入生物データベース. <https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/30280.html>. 参照:2025-01-19
- Maejima, S., Honda, M., Ota, H., Kato, H., Ueno, A., and Karasawa, S. 2024. Food habits of the exotic lizard Diploderma polygonatum polygonatum (Agamidae, Squamata, Reptilia) at a world heritage site, Yakushima Island, Japan. Journal of Asia-Pacific Biodiversity, In Press.
- Hidetoshi Ota 2003. A New Subspecies of the Agamid Lizard, Japalura polygonata(Hallowell, 1861) (Reptilia:Squamata), from Yonagunijima Island of the Yaeyama Group, Ryukyu Archipelago. Current Herpetology, 2003, Pages 61 – 71.
- Kai Wang,Jing Che,Simin Lin et al,2018,Multilocus phylogeny and revised classification for mountain dragons of the genus Japalura s.l. (Reptilia: Agamidae: Draconinae) from Asia,Zoological Journal of the Linnean Society, Volume 185, Issue 1, January 2019, Pages 246 – 267.
- The encyclopedia of animals in Japan, 5, Amphibians, reptiles and chondrichthyes Tokyo, Heibonsha (1996), p. 72.
- Iwamoto, T. 2012. A study for assessments of impact by a domestic alien lizard, Japalura polygonate polygonate, on the native ecosystem of southern Kyushu, Japan. Report of KAKEN, https://kaken-nii-ac-jp.kyoto-u.idm.oclc.org/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21510034/21510034seika.pdf.
- 船越公威, 大坪将平, 港 眞美, 小林なるみ. 2018. 指宿市における国内外来種オキナワキノボリトカゲ Japalura polygonata polygonata の生態と現状. Nature of Kagoshima, 44, 85 – 94.
- 城ヶ原貫通, 小倉剛, 佐々木健志, 嵩原健二, 川島由次. 2003. 沖縄島北部やんばる地域の林道と集落におけるネコ(Felis catus)の食性および在来種への影響. 哺乳類科学, 43(1), 29 – 37.
- Matsumoto, A., and Mori, A. 2021. Adaptive foraging strategy of an insular snake (Lycodon semicarinatus, Colubridae) feeding on patchily distributed nests of sea turtles. Behavior, 869 – 899.
- 田中聡, 千木良芳範. 2018. オキナワキノボリトカゲ. 沖縄県文化環境部自然保護課(編),改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(動物編)-レッドデータおきなわ, 193 – 194. 沖縄県文化環境部自然保護課, 那覇.
- 太田英利, 那須哲夫, 末吉豊文, 星野一三雄, 森田哲夫, 岩本俊孝. 2012. 鹿児島県本土部における国内外来種オキナワキノボリトカゲ
Japalura polygonata polygonata (Hallowell, 1861) (爬虫綱 , アガマ科)の生息状況. Nature of Kagoshima, 38, 1 – 8.
- 鹿児島県. 指定外来動植物種リスト. 令和元年11月26日. https://www.pref.kagoshima.jp/ad04/kurashi-kankyo/gairai/documents/75181_20191115151827-1.pdf.