ハクバサンショウウオ

Hynobius hidamontanus Matsui, 1987

  • 富山県産 (富山県指定希少野生動植物指定以前に採集され、飼育されている個体)

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

概要

[大きさ] [1]

  • 全長 8 – 11 cm
  • 頭胴長 4 – 6 cm

[説明]

  • 飛騨山脈北部周辺の山地に生息する、小型のサンショウウオ。
  • 雪解け後に林内の湿地で産卵する。
  • 分布域が比較的狭く、採集は禁止されている。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧IB類(EN)
  • 国内希少野生動植物種
  • 長野県白馬村では村指定の天然記念物
分布

[分布] [1]

  • 新潟・長野・富山・岐阜の一部

[生息環境][2–4]

  • 山地の林内に生息する。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ハクバサンショウウオ

[タイプ産地][6] 

  • 長野県白馬村

[説明]

  • 【分類学的変遷】1979年に長野県白馬村で発見され、ブチサンショウウオやトウホクサンショウウオとみなされていた [5]。その後、当時近縁と考えられていたトウホクサンショウウオなどとは、アロザイムや卵嚢外皮の構造等で区別できることから、87年に新種として記載された [6]。富山・岐阜の集団は、一時ヤマサンショウウオ(H. tenuis Nambu, 1991)として記載されたが、遺伝的に本種と区別できず、現在では本種に含められている [7]。最近になって、カスミサンショウウオ種群の遺伝的な解析が進み、本種はヒバサンショウウオ(かつてのカスミサンショウウオ高知型)の一部集団に属することが示唆されている [8]。
  • 【系統関係】系統的にはヒバサンショウウオときわめて近縁で、明瞭に区別できない。[8]
  • 【学名】種小名の hidamontanus は、本種が飛騨山脈で発見されたことに由来する。[6]
体の特徴

[形態][1,6]

  • 体色は、暗褐色の地色に銀白色の小斑点が散る。とくに体側から腹面にかけては斑点が密布し、地衣状斑紋をなす。
  • 止水性サンショウウオ類として小型の種。助骨歯列は浅いV字型。肋条はふつう12本。四肢は短く、前後肢を体側に沿って伸ばしても触れ合わない。後肢の第五趾を欠く。

[似た種との違い]

  • 同じサンショウウオ属の種ではクロサンショウウオおよびヒダサンショウウオが同所的に分布するが[3, 4]、これらの種とは体色および体型が異なる。
  • クロサンショウウオの方が大型で、四肢や尾が長い。また、本種と異なり、クロサンショウウオでは銀白色の小斑点が密布しない。
  • ヒダサンショウウオは黒紫色の地色に黄色の斑点が散るが、本種は褐色の地で体側に銀白色の地衣状斑紋を持つ。また本種よりもヒダサンショウウオの方が大きい。
クロサンショウウオ
ヒダサンショウウオ
生態

[繁殖][3–5]

  • 繁殖期は雪解け後の、4月中旬から5月上旬。ゆるやかな流れのある湿地で、ミズバショウの根本や落葉・倒木の下などに産卵する。

[卵][4–6]

  • 卵嚢はひも状で、かるく巻く。外皮に明瞭な条線を持たない。
  • 一匹のメスが30 – 70個ほどの卵を産む。

[幼生][2,6]

  • 幼生は6月上旬に孵化し、多くは秋までに変態する。一部は幼生のまま水中で越冬して、翌年変態する。変態時の全長は3 – 4 cmほどである。
その他

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. 日本爬虫両生類学会 (2021) 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版, 滋賀県
  2. 日高敏隆 (1996) 日本動物大百科 両生類・爬虫類・軟骨魚類. 平凡社
  3. 羽角正人, 懸川雅市, 齊川祐子 (2002) 大きな石の下に産み付けられたハクバサンショウウオの卵嚢. 爬虫両棲類学会報 2002:70–72
  4. 野村卓之 (2004) ハクバサンショウウオの新潟県新産地. 両生類誌 12:29–30
  5. 松井正文, 松井正通 (1980) 長野県産サンショウウオの1種について(予報). 爬虫両棲類学雑誌 8:103–111
  6. Matsui M (1987) Isozyme variation in salamanders of the nebulosus-lichenatus complex of the genus Hynobius from eastern Honshu, Japan, with a description of a new species. Japan J Herpetol 12:50–64
  7. Matsui M, Nishikawa K, Misawa Y, et al (2002) Taxonomic relationships of an endangered Japanese salamander Hynobius hidamontanus Matsui, 1987 with H. tenuis Nambu, 1991 (Amphibia: Caudata). Curr Herpetol 21:25–34
  8. Matsui M, Okawa H, Nishikawa K, et al (2019) Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Curr Herpetol 38:32–90

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