コガタブチサンショウウオ

Hynobius stejnegeri Dunn, 1923

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

概要

[大きさ] [1]

  • 全長 8–12 cm、 頭胴長 5–7 cm

[説明]

  • 小型の流水生サンショウウオで、九州の山地に分布する。茶褐色の地に、銀色〜黄土色の小点が集まってできた斑紋をもつ。繁殖生態が特徴的で、地下の伏流水に産卵し、幼生も変態まで地下で過ごすようだ。ワラジムシやヨコエビなどを食べる。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
分布

[分布] [2]

  • 九州の山地に分布

[生息環境][3]

  • 春や秋に、地下の礫が堆積している中から見つかることが多い。同所的に分布するチクシブチサンショウウオよりも深い土中を好むらしい。
分類

[分類][2,4,5]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > コガタブチサンショウウオ

[タイプ産地][4] 

  • 熊本県

[説明][2,4,6]

  • 本種はかつてブチサンショウウオとされていたが、現在ではそのうち九州に分布する小型集団のみを指す。詳細は以下に記す。
  • 【分類上の変遷】ブチサンショウウオ(当時は西日本一帯に広く分布すると考えられていたが、後の研究により今では細分化されている)のなかに複数の型があることは1940年代に指摘されていたが、長く地方型と捉えられていた。しかし2000年代になって遺伝学的な解析が進むと、九州北部では大小2つの地方型が同所的に分布し、しかもそれらは繁殖場所が異なって生殖隔離されているようであるから、小型集団をコガタブチサンショウウオという独立種とすることが広く認められるようになった。このコガタブチサンショウウオも2019年には分布域の異なる4種に分割され、本種は九州に分布する集団のみを指すことになった(残りの3種はマホロバイヨシマツルギ)。
  • 【学名】なお、独立種とされた当時は Hynobius yatsui Oyama 1947 という学名が用いられたが、現在では Hynobius stejnegeri Dunn 1923 を用いるのが適切だと分かっている。これは最近(2017年)の報告で、これまでベッコウサンショウウオと考えられていた H. stejnegeri のタイプ標本が実は本種コガタブチサンショウウオであると判明したため、先取権の原則によって、yatsui よりも先に発表されていた stejnegeri が有効な学名とされたためである。
  • 【種内の分化】種内でも、九州の南北では遺伝的にはそれなりの分化が見られるが、形態的な差異は小さい。
体の特徴

[形態][1,2,6]

  • 小型(頭胴長で70mm以下)。尾は短く、円筒形で扁平しない。助骨歯列は深いV字。肋条はふつう13本。第5趾は発達が悪い。体色は変異が大きいが、典型的には茶褐色の地に、銀色〜黄土色の不規則な斑紋が散る。

[似た種との違い]

コガタブチチクシブチ
体長小さい大きい
体色茶褐色の地色で、ふつう背面にも斑紋を持つ紫紺色にちかい地色で、脇腹に白色斑をもつものの背面には斑紋がない事が多い
チクシブチサンショウウオ
生態

[食性][3,7]

  • ワラジムシやヨコエビを多く食べるほか、ムカデやヤスデ、昆虫などを食べる

[繁殖][1,7]

  • 4–6月頃に地下の伏流水中で産卵する。野外での卵嚢の発見例はきわめて稀。

[成長][3]

  • 野外でも十数歳まで生きる。

[卵][1]

  • 卵嚢は紐状で、くるりと巻く。一つの卵嚢中には、大きなクリーム色の卵が一列に並ぶ。

[幼生][1,2]

  • 小さい。体色は一様な褐色で斑紋を持たない。渓流中には現れず、地下の伏流水中で変態まで過ごすと考えられる。
その他

執筆者:木村楓

執筆・公開 2021年10月


引用・参考文献

  1. 日本爬虫両生類学会 (2021) 新 日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版
  2. Tominaga A, Matsui M, Tanabe S, Nishikawa K (2019) A revision of Hynobius stejnegeri, a lotic breeding salamander from western Japan, with a description of three new species (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa 4651:401–433
  3. 坂本真理子 (2005) 九州産ブチサンショウウオの自然史的研究. 熊本大学(博士論文)
  4. Tominaga A, Matsui M (2008) Taxonomic Status of a Salamander Species Allied to Hynobius naevius and a Reevaluation of Hynobius naevius yatsui Oyama, 1947 (Amphibia, Caudata). Zoolog Sci 25:107–114
  5. Matsui M, Nishikawa K, Tominaga A (2017) Taxonomic Relationships of Hynobius stejnegeri and H. yatsui , with Description of the Amber-Colored Salamander from Kyushu, Japan (Amphibia: Caudata). Zoolog Sci 34:538–545
  6. Tominaga A, Matsui M, Nishikawa K, et al (2005) Morphological discrimination of two genetic groups of a Japanese salamander, Hynobius naevius (Amphibia, Caudata). Zoolog Sci 22:1229–1244
  7. 九州両生爬虫類研究会 (2019) 九州・奄美・沖縄の爬虫両生類: カエルやヘビのことをもっと知ろう. 東海大学出版部

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