チクシブチサンショウウオ

Hynobius oyamai Tominaga, Matsui et Nishikawa, 2019

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > チクシブチサンショウウオ

  • 尾が切れた成体
概要

[大きさ] 

  • 全長 12 – 16 cm [1]
  • 頭胴長 6.5 – 9 cm [4]

[説明]

  • かつてはブチサンショウウオとされていたが、近年新種として記載された
  • 九州の北東部のみに分布する
  • 3月から6月に河川源流部の石の下に三日月型の卵嚢を産む

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧II類
  • 福岡県レッドデータブック2014【改訂版】:準絶滅危惧種(ブチサンショウウオとして)
  • レッドデータブックおおいた2011:準絶滅危惧種(ブチサンショウウオとして)
  • レッドデータブックくまもと2019:準絶滅危惧種(ブチサンショウウオとして)
分布

[分布]

  • 九州の北東部(福岡県、大分県、熊本県)[4]

[生息環境]

  • 山地の河川源流域に生息する[2]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > チクシブチサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 福岡県北九州市[4]

[学名・和名の意味]

  • 種小名のoyamaiは九州帝国大学の両生類研究者小山準二への献名。和名のチクシは本種の基準産地を含む福岡県の筑紫地域に由来する。[4]

[説明][4]

体の特徴

[形態][1][4]

  • 背面は青紫色で普通は斑紋を持たないが、不連続な淡白色の斑紋を持つこともある。腹面は背面よりも明るく、腹面には白味がかった斑紋が散らばる。
  • 体は大型。尾は頭胴長の70%程度の長さ。
  • 第五趾はよく発達する。肋条数は基本的に13。鋤骨歯列は浅いV字状。

[似た種との違い][4][5]

  • コガタブチサンショウウオ と同所的に生息するが、コガタブチはチクシブチよりも小型であること(頭胴長5–7 cm)、コガタブチは背面に褐色がかった白斑があることで見分けられる。
  • ブチサンショウウオチュウゴクブチサンショウウオ と似るが、本種とは同所的に分布しない。特にブチ とは極めて似るが、本種の方が上顎歯と下顎歯の数が多いこと、本種は背面に斑紋をしばしば持つことなどが異なる。チュウゴクブチとは、本種の方が大型であること、本種は背面に斑紋を持たないことが多いことなどが異なる。
生態

[食性][6]

  • ダンゴムシ、陸生のヨコエビなどを食べる。

[被食][3]

  • 本種の幼生がヤマカガシに捕食された記録がある。

[繁殖][4]

  • 繁殖期は3月~6月上旬で、最大2 mほどの川幅の山地渓流の石の下に産卵する。

[卵][4]

  • 卵嚢は三日月型で、卵は黄白色で直径5 mm程度。
  • 一腹卵数は17–55個。

[幼生][1][4]

  • 多くの個体は生まれた年の秋までに上陸するが、一部の個体は越冬して翌年上陸する。
  • 幼生は爪を持たない。

執筆者:福山伊吹

2021年10月 執筆・公開


引用・参考文献

  1. 日本爬虫両棲類学会編. (2021). 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 232pp.
  2. 関慎太郎, & 井上大輔編. (2019). 特盛山椒魚本. NPO法人北九州・魚部(ぎょぶる編集室).
  3. 瀧口勲・坂口真理子・金尾充浩.2009.ヤマ カガシによるブチサンショウウオ幼生の捕食 例.爬虫両棲類学会報 2009(1):28-29.
  4. Tominaga, A., Matsui, M., & Nishikawa, K. (2019). Two new species of lotic breeding salamanders (Amphibia, Caudata, Hynobiidae) from western Japan. Zootaxa, 4550(4), 525-544.
  5. Tominaga, A., Matsui, M., Tanabe, S., & Nishikawa, K. (2019). A revision of Hynobius stejnegeri, a lotic breeding salamander from western Japan, with a description of three new species (Amphibia, Caudata, Hynobiidae). Zootaxa, 4651(3), zootaxa-4651.
  6. 九州両生爬虫類研究会編. (2019). 九州・奄美・沖縄の両生爬虫類: カエルやヘビのことをもっと知ろう. 東海大学出版部.