オオスミサンショウウオ

Hynobius osumiensis Nishikawa et Matsui, 2014

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

概要

[大きさ] 

  • 全長 11 – 12.5 cm [2]
  • 頭胴長 6.5 – 7.5 cm [4]

[説明]

  • かつてはオオダイガハラサンショウウオとされていたが、2014年に新種として記載された
  • 鹿児島県の大隅半島のみに分布する
  • 3月ごろに河川源流部の伏流水中に卵嚢を産むと考えられている

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧IB類
  • 鹿児島県レッドリスト(平成27年度改訂):絶滅危惧II類
  • 国内希少野生動植物種
分布

[分布]

  • 鹿児島県大隅半島[2]

[生息環境]

  • 標高380–810 mの山地渓流付近に生息する[2][4]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属

[タイプ産地] 

  • 鹿児島県肝属郡錦江町[4]

[学名・和名の意味]

  • 種小名と和名は本種が分布する大隅半島に由来する[4]。

[説明]

体の特徴

[形態][2][4]

  • 背面は暗紫色で基本的には斑紋を持たない。腹面は背面よりも明るく、背面と同様に斑紋を持たない。
  • 体は流水性種としては比較的小型。尾は頭胴長の70%程度の長さ。
  • 第五趾はよく発達する。肋条数は基本的に13。鋤骨歯列はV字状。

[似た種との違い][4]

  • 本種と同所的に生息するサンショウウオはいないため、基本的には分布域から同定できる。
  • 本種がかつて含まれていたオオダイガハラサンショウウオや比較的近縁なソボサンショウウオおよびべッコウサンショウウオとは、本種の方が小型である点が異なる。近縁なアマクササンショウウオとは、本種はあまり斑紋をもたないのに対し、アマクサは体側から腹面にかけて多くの白点を持つ点が異なる。
生態

[生態][4]

  • 変態後の個体は、沢の近くの倒木や落ち葉、石の下で見つかるが、生活史はほとんどわかっていない。

[食性][4]

  • 様々な節足動物およびミミズを捕食する。

[繁殖][1][3][4]

  • 繁殖場所で確認されている成体の年齢はオスで5–13歳、メスで5–11歳であり、4–5年で成熟すると考えられている。
  • これまでの野外における卵嚢の観察例は4月に川岸で傷ついた流出卵が見つかった一例のみであるが、3月後半に産後のオスが見つかっていることなどからも、繁殖期は3月ごろで、山地渓流の伏流水中に産卵すると考えられている。

[卵][4]

  • 卵は黄白色で直径5.5 mm程度。
  • 一腹卵数は13–18個。

[幼生][3][4]

  • 当歳幼生は4月ごろに流水中に現れる。
  • 初夏には多くの個体が昼夜問わず見られるが、それ以外の時期では夜にのみ見つかる。
  • 多くの幼生は生まれた年の秋に変態する。一部の幼生は越冬するが、全ての幼生は2年以内に変態すると考えられている。
  • 幼生は様々な水生の無脊椎動物を捕食する。
  • 幼生は爪を持つ。

執筆者:福山伊吹

2021年12月 執筆・公開


引用・参考文献

  1. 九州両生爬虫類研究会編. (2019). 九州・奄美・沖縄の両生爬虫類: カエルやヘビのことをもっと知ろう. 東海大学出版部.
  2. 日本爬虫両棲類学会編. (2021). 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 232pp.
  3. Nishikawa, K. & Matsui, M. (2008) A comparative study on the larval life history in two populations of Hynobius boulengeri from Kyushu, Japan (Amphibia: Urodela). Current Herpetology, 27, 9–22.
  4. Nishikawa, K., & Matsui, M. (2014). Three new species of the salamander genus Hynobius (Amphibia, Urodela, Hynobiidae) from Kyushu, Japan. Zootaxa, 3852(2), 203-226.
  5. Nishikawa, K., Matsui, M. & Tanabe, S. (2005) Biochemical phylogenetics and historical biogeography of Hynobius boulengeri and H. stejnegeri (Amphibia: Caudata) from the Kyushu region, Japan. Herpetologica, 61, 54–62.
  6. Nishikawa, K., Matsui, M., Tanabe, S. & Sato, S. (2001) Geographic enzyme variation in a Japanese salamander, Hynobius boulengeri Thompson (Amphibia: Caudata). Herpetologica, 57, 281–294.
  7. Nishikawa, K., Matsui, M., Tanabe, S. & Sato, S. (2007) Morphological and allozymic variation in Hynobius boulengeri and H. stejnegeri (Amphibia: Urodela: Hynobiidae). Zoological Science, 24, 752–766.
  8. 佐藤眞一. (2003). 古い野帳より (2) 大隅半島産オオダイガハラサンショウウオとの出会い. 爬虫両棲類学会報, 2003(1), 8-14.