アカマダラ

Lycodon rufozonatus rufozonatus Cantor, 1842

爬虫綱>有鱗目>ヘビ亜目>ナミヘビ科>オオカミヘビ属>アカマダラ

  • 小型の個体(対馬)
概要

[別名]

  •  チャビラクチ(対馬)[7]、アマガサモドキ[9]

[大きさ] 

  • 全長 60–125 cm [11]
  • 頭胴長 46–115 cm [10]

[説明]

  • 国内では対馬と魚釣島のみに分布。
  • ユーラシア大陸東部に広く分布する。
  • 夜行性で魚類、両生類、爬虫類、鳥類などを捕食する。
  • 死体食を行うことも知られている。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧種
  • 長崎県レッドリスト2022 : 準絶滅危惧種
  • 生息地の一つである尖閣諸島の魚釣島は上陸が厳しく制限されている。
分布

[分布]

  • 国内では対馬と尖閣諸島の魚釣島のみに分布する。ユーラシア大陸東部に広く分布し、極東ロシアの南部、中国の東部および南部、朝鮮半島、台湾、ベトナムとラオスの北部から確認されている[8]。

[生息環境]

  • 人里近くの低地から、山地の森林まで様々な環境に生息する[11]。
分類

[分類]

  • 爬虫綱>有鱗目>ヘビ亜目>ナミヘビ科>オオカミヘビ属>アカマダラ

[タイプ産地] 

  • Chusan, Zhejiang, China(中国浙江省の舟山)[1]

[説明]

  • アカマダラはマダラヘビ属Dinodonのタイプ種であり、長らくDinodon rufozonatumとして扱われていた。しかし、2010年代の研究で、マダラヘビ属は系統的にはオオカミヘビ属Lycodonに内含されることが明らかになり、本種もそれに伴ってオオカミヘビ属に移され、Lycodon rufozonatusとして扱われるようになった[3][14](語尾が変わっているのは、Dinodonは中性なのに対し、Lycodonは男性であるため[16])。
  • 本亜種Lycodon rufozonatus rufozonatusはアカマダラL. rufozonatusの基亜種である。本種には基亜種に加えて、サキシママダラL. r. walliの1亜種が含まれ、本亜種は宮古諸島および八重山諸島に分布する。
  • 魚釣島の個体群は1979年の調査で初めて採集され、当時はマダラヘビ属 Dinodon の 1 種として紹介されていたが、その後の研究で、アカマダラの色彩変異個体であることが明らかになった[12][18]。
体の特徴

[形態][6][10][11]

  • 背面は赤褐色または紅褐色で、胴部と尾部にそれぞれ50–80本、15–30本ほどの黒い横帯を持つ。対馬の個体群は背面の赤みが鮮やかな傾向がある。腹面は白色または黄白色。
  • 体鱗は滑らかだが、胴の後半部でわずかにキールが入ることもある。体鱗列数は普通、頸部で19列(まれに17列)、胴中央部で17列(まれに19列)、胴の後半部で15列。
  • 肛板は単一で、腹板は190-215枚、尾下板は60-87対。

[似た種との違い]

  • 対馬では、ツシママムシアオダイショウが、魚釣島ではシュウダが同所的に生息するが、本種は明瞭な赤色と黒色の横帯を持つことから容易に見分けられる。
  • 亜種のサキシママダラとは、本亜種は地色が赤いこと(サキシママダラは黄褐色)や本亜種の方が横帯の数が多い(アカマダラは胴部に50–80本、サキシママダラは胴部に20–40本)ことから見分けられる。
生態

[生態・行動][17]

  • 夜行性
  • 頭部を隠して球状になる防御行動が知られる。

[食性]

  • 国内では食性として、ニホンアマガエル、ツシマアカガエルが報告されており、死体食をすることも知られる[4][13]。また、魚類、トカゲ、 ヘビ、カエル、小型の哺乳類、小鳥なども食べるとされている[9][11]。国外では、有毒なヒキガエルを捕食することも知られている[17]。

[被食]

  • 天敵としてツシマヤマネコが知られる[5][15]。

[繁殖]

  • 6–7月に産卵する[10]。一腹卵数は5–12 [2]。

執筆者:福山伊吹

2022年7月公開


引用・参考文献

  1. Cantor, T. (1842). LIII.—General features of Chusan, with remarks on the flora and fauna of that Island. Journal of Natural History, 9(60), 481-493.
  2. Dieckmann, S., Norval, G., & Mao, J. J. (2010). A description of an Asian king snake (Dinodon rufozonatum rufozonatum [Cantor, 1842]) clutch size from central western Taiwan. Herpetology Notes, 3: 313-314.
  3. Guo, P., Zhang, L., Liu, Q., Li, C., Pyron, R. A., Jiang, K., & Burbrink, F. T. (2013). Lycodon and Dinodon: one genus or two? Evidence from molecular phylogenetics and morphological comparisons. Molecular Phylogenetics and Evolution, 68(1), 144-149.
  4. 浜中京介, 森哲, & 森口一. (2014). 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査 (特集 日本の両生類・爬虫類の食性). 爬虫両棲類学会報, 2014(2), 167-181.
  5. 井上朋子. (1972). ツシマヤマネコの糞内容物から見た食性. 哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan, 5(5), 155-169.
  6. Janssen, H. Y., Pham, C. T., Ngo, H. T., Le, M. D., Nguyen, T. Q., & Ziegler, T. (2019). A new species of Lycodon Boie, 1826 (Serpentes, Colubridae) from northern Vietnam. ZooKeys, 875, 1.
  7. 九州両生爬虫類研究会編. (2019). 九州・奄美・沖縄の両生爬虫類: カエルやヘビのことをもっと知ろう. 東海大学出版部.
  8. Li, P., Zhou, Z., Guo, P., Jiang, J., Ji, X., Borkin, L., Milto, K., Golynsky, E., Rustamov, A, Munkhbayar, K., Nuridjanov, D., Kidera, N. & Ota, H. 2017. Lycodon rufozonatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2017: e.T192124A2043244. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2017-3.RLTS.T192124A2043244.en. Accessed on 22 July 2022.
  9. 牧茂一郎. 1931. 原色版日本蛇類圖説. 第一書房, 東京.
  10. 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.
  11. 太田英利. (2014). アカマダラ. p. 80. In: 環境省(ed.), レッドデータブック2014 —日本の絶滅のおそれのある野生生物— 3爬虫類・両生類. (株)ぎょうせい, 東京.
  12. Ota, H., Sakaguchi, N., Ikehara, S., & Hikida, T. (1993). The herpetofauna of the Senkaku group, Ryukyu Archipelago.
  13. 島田知彦. (2002). アカマダラとサキシママダラにおける死体食の例. 爬虫両棲類学会報, 2002(1), 7-10.
  14. Siler, C. D., Oliveros, C. H., Santanen, A., Brown, R. M. 2013. Multilocus phylogeny reveals unexpected diversification patterns in Asian wolf snakes (genus Lycodon). Zoologica Scripta 42: 262–277.
  15. 田中幸治, & 森哲. (2000). 日本産ヘビ類の捕食者に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報, 2000(2), 88-98.
  16. 鳥羽通久, & 疋田努. (1999). マダラヘビ Dinodon 属の性について. 爬虫両棲類学会報, 1999(1), 1-2.
  17. 向高世. 楊懿如. 李鵬翔. 2009年. 台灣兩棲爬行類圖鑑(全新美耐版). p324-p325.
  18. 横畑泰志, 横田昌嗣, & 太田英利. (2009). 尖閣諸島魚釣島の生物相と野生化ヤギ問題. IPSHU 研究報告シリーズ研究報告, 42, 307-326.