ハイ

Sinomicrurus japonicus boettgeri (Fritze, 1894)

爬虫網>有鱗目>ヘビ亜目>コブラ科 > コブラ亜科 > ワモンベニヘビ属 > ヒャン > ハイ

  • 沖縄島北部
概要

[地方名・別名]

  • ナナフシ(沖縄島名護市)[10]

[大きさ] 

  • 全長:40-50 cm

[説明]

  • 日本固有亜種。有毒。
  • 地色は赤褐色またはオレンジ色で目立つ黒い縦条が5本ある。多くの場合、縦条を横断する横帯があるが、久米島など一部の個体群では横帯がほぼない。
  • トカゲ類と小型のヘビなどを捕食する。

[保全状況]

  • 環境省レッドデ-タブック2020:準絶滅危惧(NT) [6]
  • 沖縄県レットデータブック第3版:準絶滅危惧(NT)[10]
分布

[分布]

  • 奄美群島の徳之島と沖縄諸島の沖縄島、渡嘉敷島、伊平屋島、久米島などに分布する[13]。

[生息環境]

  • 湿潤な自然林や二次林の林床に生息する[13]。
分類

[分類]

  • 爬虫網>有鱗目>ヘビ亜目>コブラ科 > コブラ亜科 > ワモンベニヘビ属 > ヒャン > ハイ

[タイプ産地]

  • 沖縄島[12]

[学名の由来]

  • ドイツの動物学者Oskar Boettgerへの献名。

[説明][5, 12]

  • 本種はヒャンS. japonicus)の亜種である。Ota et al.(1999)はハイの久米島、伊江島などの個体群が横帯を持たないことから、クメジマハイ(S. j. takarai)というハイとは異なる亜種としていたが、Kaito et al.(2017)の分子系統学的研究によりクメジマハイが多系統群になることが明らかとなり、現在ではクメジマハイはハイのシノニムとされている。また、遺伝的にはハイの徳之島の個体群とヒャンが最も近縁であり、ハイは側系統群となっている。
体の特徴

[形態][9]

  • 背面はオレンジ色や赤褐色の地色で、黒い縦条が5本ある。
  • 白く縁取られた黒い横帯が等間隔で入る。個体群によって横帯の数が変わる、例えば久米島などに分布するかつてクメジマハイとされていた個体群は横帯を持たない。
  • 鱗は滑らかで光沢がある。尾端の鱗は棘状に尖っている。
  • 体鱗:13 列[12]。
  • 腹板:165–207枚[5]。
  • 尾下板:26-31 枚[5]。
生態

[食性][3, 8]

以下の記録が知られている。

[繁殖] 

  • 6月に産卵する[13]。

[行動]

  • コンバットダンスを行うことが知られている[4, 11]。

[防衛行動]

  • 刺激を受けると尾を巻いて持ち上げる、振る、尖った尾の先端で刺すといった行動をとる[2]。
  • Brodie(1993)により、サンゴヘビ属Micrurusの背面の色彩は警告色と推測されている[1]。一方、Mochida et al. (2015)では、ハイはサンゴヘビ属と近縁なワモンベニヘビ属Sinomicrurusであるが、本種の色彩パターンは警告色というよりも保護色として機能している可能性が高いとされている[7]。
その他

[コメント]

  • 日本のサンゴヘビ類の生態はまだ未知のことが多い。例えば、鋭い尾先で刺す防衛行動や、背中の色彩の進化など。それぞれの詳細な適応的意義などについて将来の研究で解明できれば良いと思う。

執筆者:叶林芸

引用・参考文献

  1. Brodie, D, EdmundⅢ. 1993. Differential avoidance of coral snake banded patterns by free-ranging avian predators in Costa Rica. Evolution. 47(1): 227-235.
  2. Fuke, Y. 2018. Sinomicrurus japonicus boettgeri (Hai coral snake). Defensive behavior. Herpetological Review 49(2): 354–355.
  3. 浜中京介.森哲.森口一.2014(2). 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査.爬虫両棲類学会報 特集:日本の両生類・爬虫類の食性, p167-181.
  4. 皆藤琢磨. 2015. 徳之島におけるハイのコンバットダンスの観察記録. Akamata(25): p21-22.
  5. Kaito, T., Ota, H. and Toda, M. 2017. The evolutionary history and taxonomic reevaluation of the Japanese coral snake, Sinomicrurus japonicus (Serpentes, Elapidae), endemic to the Ryukyu Archipelago, Japan, by use of molecular and morphological analyses.
  6. 環境省レッドリスト<http://www.env.go.jp/press/files/jp/114457.pdf> 最後閲覧日2021/2/26.
  7. Mochida, K. et al. 2015. The function of body coloration of the hai coral snake Sinomicrurus japonicus boettgeri. Zoological studies.
  8. Mori, A., Moriguchi, H. 1988. Food habits of the snakes in Japan: a critical review. The snake, vol. 20. p98-113.
  9. 中村健児・上野俊一. 1963. 原色日本両生爬虫類図鑑. p169-170.
  10. 沖縄県レットデータブック https://www.okinawa-ikimono.com/reddata/red_data_book/category_03/index.html 最後閲覧日2021/5/24.
  11. 太田英利., 岩永節子. 1996. 野外でハイ(有隣目コブラ科)のコンバットダンスを観察. Akamata 13: p13-14.
  12. Ota, H., Ito, A., Lin, JT. 1999. Systematic review of the elapid snakes allied to Hemibungarus japonicus (Gunther, 1868) in the East Asian islands, with description of a new subspecies from the Central Ryukyus. J Herpetol 33: p675-687.
  13. 関慎太郎・疋田努. 2018. 野外観察のための日本産爬虫類図鑑 第2版.p193.

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