リュウキュウアオヘビ

Cyclophiops semicarinatus (Hallowell, 1861)

爬虫綱 > 有鱗目 > ナミヘビ科 > アオヘビ属 > リュウキュウアオヘビ

  • 成体(沖縄島)
概要

[別名] [16]

  • オーナジヤ
  • アマミアオヘビ
  • オキナワアオヘビ

[大きさ] 

  • 全長 50 – 110 cm [16]
  • 頭胴長 35 – 100 cm [12,14,16]

[説明]

  • 吐噶喇列島南部、奄美諸島、沖縄諸島の平地から山地の森林に生息する。
  • 主に日中に活動し、ミミズを捕食する。
  • 卵生。

[保全状況]

  • 特になし
分布

[分布]

  • 吐噶喇列島の宝島、小宝島及び、奄美諸島と沖縄諸島のほとんどの島に分布[6]

[生息環境]

  • 平地から山地の森林などに生息する[12,16]。
分類

[分類]

  • 爬虫綱 > 有鱗目 > ナミヘビ科 > アオヘビ属

[タイプ産地] 

  • near Napa(沖縄島那覇)[3,16]。

[説明]

  • 奄美大島の個体群はかつて、腹板数の少なさからLiopeltis semicarinatus fritzeiLiopeltisは当時のアオヘビ属)という亜種として記載された[7]が、その後の研究で実際には沖縄諸島の個体群と形質が重なることが明らかになり、現在は認められていない[14,16]。また、高良(1962)は宝島の個体群が異なる亜種である可能性について示唆したが、Ota et al. (1995)によって否定された[14,16]。
  • アオヘビ属Cyclophiopsの分類学的問題については、サキシマアオヘビCyclophiops herminaeのページ参照。
体の特徴

[形態][5,7,12,14,16]

  • 背面は緑色や灰色がかった黄緑色で模様を持たないことが多いが、主に奄美諸島の個体群では暗褐色の縦条を持つ個体もいる。腹面や上唇板の下縁は黄色で模様はない。幼体は頭部から胴の前半部にかけて暗褐色の小斑を持つこともある。
  • 頭部が小さく、頸部と幅がほぼ変わらない。
  • 尾長は頭胴長の25%程度。
  • 上唇板は8枚(時に7枚)、下唇板は7枚。
  • 体鱗列数は15列で、外側の3列または4列を除きキールを持つ。
  • 腹板は166–196枚で北方の個体群ほど減少する傾向がある。尾下板は67–80枚。肛板は2分する。

[似た種との違い]

本種と同所的に生息するヘビ類のほとんど(アカマタハブなど)は背面に斑紋を持つため、背面に模様を持たないか、暗褐色の縦条のみを持つ本種とは容易に見分けられる。また、本種は頭部が小さく、頸部と幅がほぼ変わらない点でもこれらの種と明確に異なる。本種と同所的に生息するアマミタカチホは背中に縦条を持つか、背面に模様がないが、本種よりも小型であることや、尾下板が一列である点などで、容易に見分けられる。

アカマタ   アマミタカチホ

同属のサキシマアオヘビ(八重山諸島に分布)は、本種よりも体型が太く、体鱗列数がより多い17列であることから見分けられる。また、リュウキュウアオヘビの方が明るい色をしていることが多い。

リュウキュウアオヘビサキシマアオへビ
生態

[行動]

  • 主に日中に活動し、日光浴も行う一方、夜間にも活動する[11,12,20]。
  • 林床を移動しながら落ち葉の下などに頭部を差し込んでは引き戻し、ミミズを採餌する。ミミズを発見して咬みつくと、左右の顎を動かして咬みついている位置をミミズの末端部まで移動させ、ミミズの末端部に顎が移動すると素早く飲み込む[15]。
  • 沖縄島で日中に行われた調査では、5月から10月にかけて活動が活発化し、果樹園のような開放的な環境では真夏に活動性が落ちることが確認されている[10]。冬季には活動性が大きく落ちるが、完全な冬眠状態にはならないとされる[10]。
  • 夜間に地上からおよそ7 mの樹上で休む行動が観察されている[2]。
  • 頸部を左右にくねらせる行動が観察されている。この行動の機能的意義はわかっていないが、対捕食者行動である可能性が言及されている[20]。

[食性]

  • ミミズ類を捕食する[4,8,15,16]
  • ミミズ食のホタル(Stenocladius sp.)の幼虫を捕食した例がある[1]。
  • リュウキュウカジカガエルの捕食例があるが、少なくとも飼育下ではカエル類に興味を示さない[8,15]。

[被食]

  • アカマタ、ヒメハブ、ハブ、ムラサキサギ、サシバ、ジャワマングースに捕食された例がある[17]。

[繁殖]

  • 4、5月および8、9月に交尾が観察されている[9,13]。
  • 野外では石積みの間に産卵された卵が見つかっている[19]。
  • 産卵は7月ごろに行われ、卵は9月ごろに孵化する[5,19]。
  • 一腹卵数は3–11個[18]。
その他

[コメント]

  • ミミズを飲み込む様子はまるでうどんをすするかのようで、あまりに速いので一見の価値あり。
  • 南西諸島で日中にもよく見れる数少ないヘビの一つです。

2022年9月公開

執筆者:福山伊吹 


引用・参考文献

  1. Fukuyama, I & Kodama, T; 2019. Cyclophiops semicarinatus (Ryukyu Green Snake) Diet. Herpetological Review 50 (2): 391-392
  2. Fukuyama, I., Hamanaka, K., & Fujishima, K; 2020. Cyclophiops semicarinatus (Ryukyu Green Snake) Arboreality. Herpetological Review 51 (2): 347.
  3. Hallowell, E. (1861). [1860] Report upon the Reptilia of the North Pacific exploring expedition, under command of Capt. John Roger. In Proc Acad Nat Sci Phil (Vol. 1860, pp. 480-510).
  4. 浜中京介, 森哲, 森口一. 2014. 日本産ヘビ類の食性に関する文献調査. 爬虫両棲類学会報 2014(2):167-181.
  5. 石場ゆり. (2020). 徳之島産リュウキュウアオヘビの飼育下での孵化例と孵化個体の色彩について. Akamata (29): 19–23.
  6. 菊川章. (2019). 沖縄県立博物館・美術館における両生類および陸生爬虫類の標本資料の収蔵状況. 沖縄県立博物館・美術館博物館紀要, (12), 7-14.
  7. Maki, M. (1931). A Monograph of the Snakes of Japan. Dai-ichi Shobo.
  8. Mori, A. and H. Moriguchi. 1988. Food habits of the snakes in Japan : a critical review. The Snake 20: 98-113.
  9. 森口一・田中聡・樋上正美. (1987). 野外におけるリュウキュウアオヘビの交尾目撃例. Akamata (4): 7–8.
  10. Nakachi, A. (1995). Seasonal activity pattern of the colubrid snake, Cyclophiops semicarinatus, on Okinawajima Island, Ryukyu Archipelago, Japan. Japanese Journal of Herpetology, 16(1), 1-6.
  11. 仲井真弘. 1983. リュウキュウアオヘビ(Opheodrys semicarinatus)の夜間採集例. Akamata (1): 7.
  12. 日本爬虫両棲類学会 編. 2021. 新日本両生爬虫類図鑑. サンライズ出版. 彦根.
  13. 太田英利.1993.野 外 で リュウキ ュウア オヘ ビの 交 尾 を 観 察.Akamata(8):3-4.
  14. Ota, H., Shiroma, M., & Hikida, T. (1995). Geographic variation in the endemic Ryukyu green snake Cyclophiops semicarinatus (Serpentes: Colubridae). Journal of herpetology, 44-50.
  15. 太田英利.1996.アオヘビ類.p.95–96. 千 石 正一 ・疋田 努 ・松井正文 ・仲谷一宏(編) 動物大百科5 両生類 ・爬虫類 ・軟骨魚類.平凡社, 東 京.
  16. 高良鉄夫. (1962). 琉球列島における陸棲蛇類の研究. 琉球大学農家政工学部学術報告 (9), 1-202.
  17. Tanaka, K. and A. Mori. 2000. Literature Survey on Predators of snakes in Japan. Cur. Herpetol. 19(2): 97-111.
  18. 田中 聡.1995.沖 縄 島産 リュウキ ュウアオヘ ビ の 一 腹 卵 数 の 一 例. Akamata (12):33.
  19. 田中 聡. 2006. リュウキュウアオヘビの産卵場所および孵化について. Akamata (17): 24–26.
  20. 戸田守. (2003). 野外で観察されたリュウキュウアオヘビ Cyclophiops semicarinatus の頸部をくねらせる行動. 爬虫両棲類学会報, 2003(2), 67-71.