ヒメタゴガエル

Rana kyoto Eto, Matsui, et Sugahara, 2022

両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > アカガエル属

  • 岩の隙間で鳴く雄(京都3月)
概要

[大きさ] 

  • 体長 雌雄ともに体長3 cm 程度(兵庫県南東部では4cm程度)

[説明]

  • 近畿地方北部の山地に分布する小型のタゴガエル類。2022年にタゴガエルから独立種として記載されたもので、同所的に見られるタゴガエルと比べて体が小さいことが特徴。ただしタゴガエルと共存せず単独分布する集団では、本種も体サイズが比較的大きくなる。3月末から5月にかけて伏流水中で産卵する。

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020の時点では未記載種であった。
分布

[分布] [1, 2]

  • 北は福井県南部、東は滋賀県高島市、南は兵庫県南部、西は鳥取県若桜町までの地域

[生息環境][1]

  • 山地に生息する。
分類

[分類]

  • 両生綱 > 無尾目 > アカガエル科 > アカガエル属 > ヒメタゴガエル

[タイプ産地] [1]

  • 京都市

[説明][1,3,4]

  • 京都の北山地域に繁殖期の異なる大小2タイプのタゴガエルがおり、それらが別種であることは1990年代には示唆されていた。しかしそれら2タイプの系統関係は過去の交雑により複雑になっており、新種として記載されたのは最近、2022年のことである 。
  • 学名の kyoto は本種が京都で発見されたことに由来する。
体の特徴

[形態][1]

  • 背面は赤褐色から黒褐色で、不規則な模様をもつ場合もある。鼓膜の周辺は濃い褐色となる。腹面には喉から胸にかけて薄墨色の斑点が密布する。また太腿の腹面にも小斑紋が散る。
  • 吻は短く、頭長と頭幅が同程度。皮膚は滑らか。水かきの発達は弱く、水かきが発達する繁殖期のオスでも第5趾末端まで届かず一関節を空ける。

[似た種との違い]

  • 兵庫県六甲山周辺や北摂山地を除く分布域の大半でタゴガエルと同所的に分布する。また京都府北部や滋賀県西部ではナガレタゴガエルが同所的に見られることがある(ただしナガレタゴガエルはこれらの地域で珍しい)。
  • 本種の最も特徴的な点は小さな体サイズで、成体でも3cmほどにしかならないため、同所分布するタゴガエルやナガレタゴガエル(5cmほど)と比べて明らかに小さい。成体であることは、オスでは婚姻瘤の存在で、メスでは秋から繁殖期にかけて体側から白色の卵が透けて見えることで判別がつく。
雄の婚姻瘤(矢印)(見づらい写真のためいつか修正予定)
雌成体の体側から卵が透けて見える(京都9月)
  • 繁殖期である4月ごろになると、枝沢の源流部や路肩の水の染み出しから本種の鳴き声を聞くことができるが、タゴガエルの鳴き声とは大きく異なるので慣れれば識別は容易。なおナガレタゴガエルは水中で鳴くため鳴き声はふつう聞こえない。
ヒメタゴガエルの鳴き声(京都3月)。同所分布するタゴガエルに比べて1ノート(=”グゥ…”の一声)が長く、また複数回連続して鳴くことが少ない。
タゴガエルの鳴き声(京都5月)。ヒメタゴに比べてノートが短く、また5回程度連続して鳴くことと多い。1ノートのなかで音が高くなったり低くなったりする(すなわち周波数変調が明瞭な)鳴き方も珍しくない。ただしこれは近畿地方北部のタゴガエルの鳴き方の特徴であり、他の地域では必ずしも同じパターンで鳴くわけではない。
生態

[繁殖][1, 4, 5]

  • 繁殖期は京都北山で4月上旬から下旬。タゴガエルよりも早く、繁殖期は重ならない。六甲山では遅れて4月下旬から5月下旬。水温9度ほどの地下の伏流水中や岩の隙間でオスが鳴き、卵も伏流水中に産卵する。

[成長][6]

  • 変態時の体長は7mmほどと極めて小さい。雌雄ともに約3歳で繁殖を開始する。

[卵][1]

  • 伏流水が溜まる地下の穴や岩の隙間に30–50程度の卵を産み付ける。卵径は3mmほど。

[幼生][1,6]

  • 全身に色素が薄く、卵黄の白さが目立つ。
  • 餌を食べずとも卵黄のみで変態するまで成長できるが、野外ではデトリタスをいくらか食べるかもしれない。
  • 京都では6月半ばに変態する。
ヒメタゴガエルの幼生
その他

[コメント]

  • 単独域では体サイズがそれほど変わらない2種が、共存域で大小の2型に分かれるという明確な形質置換が見られるのは日本のカエルでは珍しく、面白い種です(近い事例としては八重山のオオハナサキガエルコガタハナサキガエルが挙げられる)。成体は他種の幼体ほどの大きさしかありませんが、オスは太くがっしりした前腕を持ち、ミニチュアながらいかにもオスらしい特徴が出ます。

執筆者:木村楓


引用・参考文献

  1. Eto K, Matsui M, Sugahara T (2022) Description of a new subterranean breeding brown frog (Ranidae: Rana) from Japan. Zootaxa 5209:401–425
  2. 中津元樹, 室岡優. (2023) 大阪府北部におけるヒメタゴガエルとタゴガエルの分布状況. 爬虫両棲類学会報 2023:191–198
  3. 菅原隆博 (1990) 京都北山におけるタゴガエルの繁殖生態(講演要旨). 爬虫両棲類学雑誌 13:145
  4. 菅原隆博, 松井正文 (1997) 京都雲ヶ畑産タゴガエル2型の繁殖期と繁殖場所(講演要旨). 爬虫両棲類学雑誌 17:68–69
  5. 大東義徹, 中溝茂雄 (1993) 六甲山におけるタゴガエルの繁殖生態と鳴き声. 神戸大学教育学部研究集録 213–230
  6. Sugihara T, Matsui M, Sugahara T (2022) A comparison of growth patterns between large- and small-sized Rana tagoi (amphibia: Ranidae) from Kitayama, Kyoto, japan. Curr Herpetol 41:230–237

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