ヒロシマサンショウウオ

Hynobius sumidai Sugawara, Naito, Iwata et Nagano, 2022

両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ヒロシマサンショウウオ

概要

[英名]

Hiroshima Salamander [7]

[大きさ] 

  • 全長 4.5 – 9.5 cm程度 [8]
  • 頭胴長 3.6 – 5.7 cm (オスの成体) [8]

[説明]

  • アキサンショウウオとして知られていたが、近年新種として記載された
  • 広島県の一部のみに分布する
  • 3月から4月に水田の溝や湿地などにコイル状の卵嚢を産む

[保全状況]

  • 環境省レッドリスト2020:絶滅危惧IB類(アキサンショウウオとして)
  • レッドデータブックひろしま2021:絶滅危惧Ⅱ類(アキサンショウウオとして)
  • 特定第二種国内希少野生動植物種(アキサンショウウオとして)
  • 広島県東広島市天然記念物(アキサンショウウオとして)
分布

[分布][8]

  • 広島県南部の一部

[生息環境]

  • 標高160〜450 m(平均約300 m)の丘陵地の水田や湿地の周辺に生息する[8]
分類

[分類]

  • 両生綱 > 有尾目 > サンショウウオ科 > サンショウウオ属 > ヒロシマサンショウウオ

[タイプ産地] 

  • 広島県竹原市[7]

[学名の由来]

  • 種小名のsumidaiは広島大学で教授を務め、両生類学へ多くの功績を残している住田正幸博士への献名[7]。

[説明]

  • 本種はかつてカスミサンショウウオ安芸型または広島型とされていた[2][3][4][5][6]。
  • 2019年に遺伝的、形態的な違いに基づき、それまでカスミサンショウウオとされていた島根県・広島県・愛媛県の一部の個体群がアキサンショウウオとして新種記載された[1]。
  • 2022年にアキサンショウウオに含まれていた一部の系統がゲイヨサンショウウオH. geiyoensisヒロシマサンショウウオH. sumidaiとして記載された[7]。
  • 本種はゲイヨサンショウウオに近縁である[8]。
体の特徴

[形態][7][8]

  • 背面は淡褐色で小さな黒斑が散らばる。腹面は背面よりも色が明るく、白色の小点が散らばる。普通、尾の上面の黄褐色の条線はしばしば不明瞭で、尾の下面ではより不明瞭になる。繁殖期のオスの喉の下面はあまり白くならない。
  • サンショウウオ属では小型種で、前後肢や尾は比較的短い。体側に沿って前後肢を伸ばしても指はほとんど重ならない。尾は頭胴長の60–80%程度の長さ。肋条数は12–13で普通12。
  • 第五趾の発達は悪く、5%程度の割合で第五趾を持たない。

[似た種との違い][8]

  • 2019年に記載されたカスミサンショウウオ種群(カスミ、ヤマトセトウチサンインヒバイワミアブヤマグチ)の他種とは、小型であること、胴が長いこと、前後肢が短いこと、肋条数が普通12であること、尾の上下面に黄色の条線を持たないことなどで識別できる。また、これらの種とは分布域が重ならない。
  • 近縁なゲイヨサンショウウオとは、本種の方が小型であることで識別できる(本種のオスは36–57 mm程度なのに対し、ゲイヨサンショウウオのオスは53–67 mm程度)。
  • 本種はアキサンショウウオに最も似るが、前後肢が本種の方が短いことなどで区別される。
ゲイヨサンショウウオ
ヒロシマサンショウウオ
アキサンショウウオ
生態

[繁殖]

  • 繁殖期は2月~4月で、小川や水田の溝、湿地などに産卵する[7][8]。

[卵][8]

  • 卵嚢はコイル状。
  • 卵数は3–67(平均26)。

執筆者:福山伊吹


引用・参考文献

  1. Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Aoki, G., Eto, K., Yoshikawa, N., Tanabe, S., Misawa, Y., & Tominaga, A. (2019). Systematics of the widely distributed Japanese clouded salamander, Hynobius nebulosus (Amphibia: Caudata: Hynobiidae), and its closest relatives. Current herpetology, 38(1), 32-90.
  2. 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2005). 阿武・津和野地方および山口市に分布するカスミサンショウウオの一集団. 両生類誌, 14, 11-14.
  3. 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2007). 西日本におけるカスミサンショウウオの3つの大きなグループ. 爬虫両棲類学会報, 2007, 58–59.
  4. 大川博志, 奥野隆史, & 宇都宮妙子. (2009). 西日本のカスミサンショウウオの後肢趾の変異. 爬虫両棲類学会報, 2009(1), 12-18.
  5. Okawa, H. & Utsunomiya, T. (1989). Hynobius nebulosus from Hiroshima Prefecture. p. 142–146. In: Matsui, M., Hikida, T. and Goris, R.C. (eds.), Current Herpetology in East Asia. Herpetological Society of Japan, Kyoto.
  6. 大川博志 & 宇都宮妙子. (1997). カスミサンショウウオ後肢趾の骨. 日本爬虫両棲類学雑誌14(4), 214.
  7. Sugawara, H., Naito, J. I., Iwata, T., & Nagano, M. (2022). Molecular phylogenetic and morphological problems of the Aki salamander Hynobius akiensis: description of two new species from Chugoku, Japan. Bulletin of the Kanagawa Prefectural Museum (Natural Science), 2022(51), 35-46.
  8. Tomimori, Y., Matsui, M., Okawa, H., Nishikawa, K., Tanabe, S., & Kamasaka, R. (2023). Reassessment of species delimitation using nuclear markers in three lentic-breeding salamanders from the Chugoku District of Japan (Amphibia: Caudata: Hynobiidae). Zootaxa, 5293(1), 145-160.

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